わたしたち生活者のための「共通番号」推進協議会 発足シンポジウム、ニコニコ動画で中継あり

12/5(日)14時より、「わたしたち生活者のための『共通番号』推進協議会」の発足シンポジウムが開催されます。当日は、ニコニコ動画での生中継もあります。

公開されている案内によれば、

わたしたち生活者のための『共通番号』推進協議会
・代表:北川正恭・早稲田大学大学院教授
・事務局:公益財団法人日本生産性本部

発足シンポジウム
・峰崎内閣官房参与による政府方針の説明
・制度導入の目的やあり方、国民的合意形成の道筋と課題などを討論

【来賓挨拶】
菅直人 内閣総理大臣

【討論参加予定者】
玄葉光一郎 国家戦略担当大臣
峰崎直樹 内閣官房参与
石破茂 自民党政調会長
井上義久 公明党幹事長
浅尾慶一郎 みんなの党政調会長 他

こうして見ると、かなり豪華なメンバーですね。詳しい内容は、また後日ご報告したいと思います。

■共通番号とは

ニコニコ動画の案内では、
共通番号制・・・税金や社会保障の個人情報を一元的に管理するための番号を、国民一人一人に付与するというもの
とされています。

しかし、政府では「共通番号」ではなく「社会保障・税に関わる番号制度」という言葉を使っており、現在も検討中であるため、明確な定義はされていません。ただし、中間とりまとめ(下記)の意見募集案内には、次のような記述があります。

★「所得等の情報の把握と活用のための番号」を導入するとともに、「IT化を通じ効率的かつ安全に情報連携を行える仕組み」を、国・地方で連携協力しながら、「社会インフラ」として整備する必要があると考えられます。★

また、中間整理案では

★「社会保障・税に関わる番号制度」は、情報通信技術を活用することで(完全に解決できないまでも)少しでも緩和できないかという問題意識を発端としつつ、更には社会保障・税等の分野を一体的にとらえ、制度の効率性・透明性・公平性を高めようという観点から、それらのために必要な基盤として導入が検討されているものである。★

とあります。さらに

★番号制度の目的は、番号を用いて所得等の情報の把握とその社会保障や税への活用を効率的に行うとともに、IT化を通じ効率的かつ安全に情報連携を行える仕組みを、国・地方で連携し協力しながら整備することにより、国民生活を支える社会的基盤を構築することである。★

「問題山積みの現状を変えるために、社会インフラとして番号制度を導入しましょう」ということですね。

ということで、現時点での作者の理解は次の通りです。

○共通番号:納税者番号や社会保障番号として使われる番号
○社会保障・税に関わる番号:納税者番号や社会保障番号として使われる番号かもしれないけど、そうでないかもしれない。でも、共通番号と同じような「効果」をもたらすもの。

※ここで言う社会保障番号は、「所管庁等が発行する社会保障分野の共通番号」を想定しています。

今後は、国民IDとの違いなどが、より明確になっていくでしょう。これは、また別の機会に整理したいと思いますが、セクトラル方式で知られるオーストリアでは、次のように使い分けています。

1 原則不変で公開の中央住民登録番号(見える番号)
2 コンピュータ上だけで使われる共通ID(見えない番号)
3 コンピュータ上だけで使われる分野別ID(見えない番号)
4 納税者番号としても使われる社会保障番号(見える番号で、日常的に利用される公開番号)

これを日本に当てはめた場合、

1 住民票コード(見えるけど、あまり表に出てこない非公開番号)
2 国民IDコード(コンピュータ上だけで処理される見えない番号)
3 既存の分野別番号(見える番号で、公開・非公開など様々)
4 社会保障・税に関わる番号(見える番号で、日常的に利用される公開番号)

となりそうな気もしますが、このあたりの整理がまだされていないので関係者も混乱している・・・というのが現状と思います。

■参考資料

中継を見る前に、下記の資料を読んでおくと、より討論を楽しめると思います。

社会保障・税に関わる番号制度に関する実務検討会 中間整理案
平成22年12月3日
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/dai2/gijisidai.html
パブリックコメントの結果を踏まえた整理案。導入の趣旨、主な論点、目指す方向性、今後のスケジュールなど。概要版(PDF)だけでも読んでおくと、討論内容の理解に役立ちます。

「社会保障・税に関わる番号制度に関する検討会 中間取りまとめ」に対する意見募集の結果
平成22年11月11日
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/dai1/siryou4.pdf
個別の意見は、とても面白い。作者のブログ「社会保障・税番号制度の意見募集結果が公表、政府が目指す方向性とは」もどうぞ。

「社会保障・税に関わる番号制度に関する検討会 中間取りまとめ」
平成22年6月29日
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/dai1/siryou3.pdf
利用範囲、制度設計、プライバシー保護など国民の懸念の3視点から選択肢を提供。導入費用・期間の試算もあります。

納税者番号制度に関する資料(財務省:平成22年10月現在)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/nouzei.htm
「番号制度」を税務面で利用する場合のイメージ図があり、主要国の税務面で利用される番号制度の一覧もあります。

電子行政に関するタスクフォース(国民ID制度について)
平成22年12月2日
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/denshigyousei/dai6/gijisidai.html
配布資料の「国民ID制度」における国民IDコードの考え方(PDF)を読むと、(内閣官房IT担当室が考える)社会保障・税に関わる番号と国民IDの関係性が少し見えてきます。

■論点と国民の対応

「税や社会保障の現状が問題山積みで、さすがに変えないとヤバイ」というのは、あまり異論は無いと思います。

論点としては、
1 番号制度で、本当に問題が解決できるのか(有効な手段として機能するのか)
2 番号制度に効果が期待できるとしても、コストやリスクが大き過ぎるのではないか
3 番号制度を導入するとして、どうすれば期待通りの効果をもたらすことができるか

があると思います。1は「番号制度は無駄である」、2は「番号制度は費用やリスクに見合わない」と言い換えても良いでしょう。

政府の方針としては、「番号制度は万能ではないけれど、一定の効果が期待できるので、試してみる価値がある」ということで、これから3を検討していくのだと思います。

作者自身は、番号制度を試してみる価値は十分にあると考えています。もちろん、様々な不安やリスクもあるし費用もかかるけど、それは国民や企業を含めた社会全体で負担していくべきものと思います。

日本の国民や住民として、色々と不満も多いけど、政府の保護や行政サービスを受けている以上は、番号制度について真剣に考え、建設的な議論を進めていくことが義務なのではないかとも思います。

仮に、番号制度を導入できなかったとしても、また導入して上手く機能させられなかったとしても、その結果の責任は国民全体で負うべきとも思います。

番号制度や国民IDを検討する中で、一人でも多くの国民が、日本の将来について真剣に考えてくれることを強く望みます。一人でも多くの人たちが、権利ばかりを主張せず、公益とか自身の義務・役割などに思いをはせてくれることを心から願います。

“わたしたち生活者のための「共通番号」推進協議会 発足シンポジウム、ニコニコ動画で中継あり” に5件のコメントがあります

  1. 共通番号と国民ID
    初めてメールを差し上げます。
    2010年12月3日の「共通番号と国民ID」の内容で”2は「番号制度は費用やリスクに見合わない」”との表現があります。このことはよく言われることですが、このことを考える場合、50年100年のスパンで考える必要があることをもっとアピールするべきであろうと思いますがいかがでしょうか。長期的に見たら、共通番号は社会のシステムの効率化に必須の制度ではないでしょうか。

  2. 長期視点
    田仲さま、コメントありがとうございます。

    「番号制度は費用やリスクに見合わない」は、番号制度の導入に反対する側の主張として挙げられるものと思います。

    費用やリスクの無い制度や事業はありませんので、今後は、いかに費用やリスクを抑えつつ、効果を高めていけるかといった建設的な議論が期待されます。

    50年100年のスパンで考える必要があることは、全くご指摘の通りと思います。この点について、少しずつですが、国民も理解してきているとも感じています。

    毎年、1兆円以上の社会保障関連費増加が続く中で、共通番号が社会インフラとして有効に機能してくれるのであれば、税金を使う価値は十分にあると思います。

  3. Unknown

    行政の電子化全般に対して反論をされる方に対しては、

    「今、まっさらな状態から、国を、制度を、インフラを整備するとしたら、電子的な手段を用いない方法を採り得るか?」

    という問いかけをしてみたいところです。

    電子的手段を用いずに「管理」することで、いかにコスト(人件費)やリスク(年金情報喪失など)が高いかを考えれば、それらに比べれば、電子的手段が如何に安価で安全性の高いものかは明らかなのでは。
    (明らか、と言いつつワタシも実証したわけではないですが)

    現行の法制度が「人手による行政」を前提として組まれており、その枠組みの中で電子化にかかるコスト評価を行っても、人は減らず、逆にコストパフォーマンスが劣化するという評価結果が出ないかと懸念しています。行政が自身の手によって、余剰人員の整理にまで言及できるかによって、期待効果は大きく効果は異なるのではないでしょうか。

  4. Unknown
    匿名@東京さま、コメントありがとうございます。

    現在の行政は、国も地方もコンピュータ処理なしにはやっていけず、たくさんの情報システムが動いています。

    番号制度で、新たに個人情報が収集・利用されると考えがちですが、実際には「現在の収集・利用方法をもう少し効率的に行いましょう」というニーズがたくさんあります。

    評価については、まさにご指摘の通りと思います。番号制度に効果があるなら、人員・人件費の削減、IT費用の削減、総事業費の削減などを指標とするのが良いと思います。

    評価指標については、国民への説明や信頼構築といった観点からも、行財政改革や公務員改革とセットで考えて欲しいですね。

  5. 先進国の経済成長戦略
    最低限所得保障の一種としてベーシックインカムが有る様です。当方は全国民に国内航空路線を年間三回利用する権利を提供することを「先進国日本の新経済成長戦略」とすることを提唱する。尚、一回分を「5000円で販売」「6000円で購入」することは可能。

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