自治体の「様式の標準化」や「利用ルールのバラバラ化」の問題は、「データガバナンスの問題」である

地方行政の効率化と地方自治の本旨
http://www.huffingtonpost.jp/hajime-yamada/local-goverment_b_6749314.html
東洋大学の山田肇先生による投稿。

なぜ、自治体ごとに様式を決め、システムは個別に発注しているのだろうか。その原因は憲法第92条に書かれた「地方自治の本旨」にある。

総務省の「地方自治体における業務の標準化・効率化に関する研究会」報告書では、「様式の標準化」について、カスタマイズの手間が省けるしパッケージ導入コスト削減は自治体にも意味がある、というITベンダーの意見が報告書に紹介されている。一方で、行政法学の立場から、「全体の効率化という大きな政策目標のため国が自治体の条例を介させずに様式を決めることの正当性が果たしてあるか検討が必要ではないか」という指摘があったことも記載されていると。

 

同様の問題は、個人情報保護条例や情報公開条例や行政手続条例などにも見られますが、個人的には、「データガバナンスの問題」と理解しています。

諸外国では、住民登録のデータベースを国が一括して管理しています。国がデータ管理者となっている住民登録DBから発行される各種証明書は、当然ながら「様式」も「利用ルール」も一つであり、「様式の標準化」や「利用ルールの共通化」といった問題自体が発生し得ないのですね。日本で言えば、「法定受託事務の修正版」のような感じでしょうか。

日本でも、「全国の自治体が共有・相互利用するべきデータ」については、国がデータ管理者となって、目的ごとのデータベースに集約するべきなのです。そうすれば、システムも様式も利用ルールも自ずと統一されます。例えば、全国を網羅する「生活保護データベース」があれば、そこに問い合わせることで、重複した申請や受給がないか、すぐに確認することができます。同様に、「要援護者リスト」も、各自治体が作成・管理するのではなく、国が一つのデータベースとして管理すれば良いのです。

別の言い方をすれば、「全国の自治体が共有・相互利用するべきデータ」であるにもかかわらず、各自治体が個別にデータを管理している状況が変わらない限り、いくら「様式の標準化」や「ルール・条例の共通化・統一化」を進めても、問題が解決することはないでしょう。それゆえに、「データガバナンスの問題」と理解しているのです。

各自治体においては、「全国の自治体が共有・相互利用するべきデータ」+「自治体独自で利用・管理するデータ」を駆使することで、今まで以上に「地方自治の本旨」に従った住民サービスを展開できるはずです。

さて、上記の総務省研究会の報告書については、ICPFセミナー(電子行政研究会)で取り上げます。興味のある方は、どうぞご参加くださいませ。

関連>>ICPFセミナー(電子行政研究会)ご案内 「地方自治体における業務の標準化・効率化」(3月10日:東京)
http://blog.goo.ne.jp/egovblog/e/5df415717a0b7f5c0c5b73c6b3d5950c