MBR Consulting マナブーズ・ルーム・コンサルティング
電子申請と添付書類、必要な情報の見極めが大切 2001年3月23日

Home >>> 論考・資料室 >>> 電子申請と添付書類、必要な情報の見極めが大切
 
電子申請における添付書類のあり方から、情報の共有・活用について提案しています。
 
要旨:
添付書類が多いことは、申請者と行政の負担になり、電子化する際の障害となる。添付書類を減らすためには、「申請に必要な情報を少なくする」ことと「情報の入手方法を見直す」ことが有効である。

電子申請システムにコミュニケーション機能を備えることで、申請や審査に関するノウハウを共有し、わからないことを「人」に教えてもらうことができる。

 
行政書士の間で電子申請の話をすると、「添付書類はどうなるのか?」という議論が上がることが多いです。実務をする上では、この添付書類や資料の収集・作成が重要であり、労力を必要とするところだからです。別の言い方をすれば、添付書類が複雑であればあるほど報酬を請求できるとも言えるでしょう。そして、代理・代行される行政手続においては、「簡易な申請書本体+複雑な添付書類」という図式があると言えましょう。

ところで、行政手続の電子化を考えた場合、現行のシステムに従った添付書類を、そのまま電子化しようとしたら、とてもじゃないですがスムーズな電子申請への移行はできません。申請者、行政職員共に負担は増え、コストも増すばかりでしょう。

そこで、電子申請における添付書類はどうなるのか?という問題を少し考えてみたいと思います。

(1)添付書類が必要な理由

添付書類が必要となる主な理由は、次の二つでしょう。

申請内容の正確性を確認

例えば、申請書に記載されている申請者の氏名や住所が本当かどうかを確認するために、住民票の写しを提出する場合などです。

要件等を満たしていることを確認

例えば、一定の収入を要件とする申請について、確定申告書控えの写しや給与証明書などを提出する場合などです。

つまり、これらの目的が達成できれば、添付書類はなくてもかまわないのです。

(2)書類から情報を分離

行政が欲しいのは、添付書類の書式(紙)ではなく、そこに記載された情報です。実際に、多くの紙文書を電子化する(コンピュータに入力する)作業が必要となっており、それは紙から情報を分離することで、情報を利用しやすくするということでありましょう。紙文書と電子文書の違いとして、

紙文書:フォーム(書式)と情報が一体化
電子文書:情報が独立して存在する

ということが言えると思います。

つまり、多くの添付書類が要求されるケースでは、申請内容を審査して判断するために、それだけ多くの情報を必要とするということになります。そして、多くの情報を処理する必要があるほど、審査に時間がかかり、情報を管理する(情報公開への対応を含む)ための負担も大きくなります。

(3)添付書類を少なくしよう

添付書類が多いと、申請者の負担はもとより、行政の負担も大きい。しかも、電子化する際にも障害となる。となれば、できるだけ減らしてしまった方が効率的でしょう。添付書類を減らすためには、「申請に必要な情報を少なくする」ことと「情報の入手方法を見直す」こと、このニつが有効と思われます。

申請に必要な情報を少なくする

申請とその審査に必要な情報が少なくなれば、自ずと添付書類は減ることになります。具体的には、

1)許可要件等の見直し・簡素化

行政改革、規制改革の流れと合致しますね。各種手続法等の改正が必要です。

2)必要書類の見直し

情報が重複するものがありますし、そもそも本当に必要なの?というものは、どんどん減らしましょう。

★情報の入手方法を見直す

必要な情報は、何も申請者から提出してもらう必要はありません。行政側でできることは自分たちで済ましましょう。具体的には、

1)電子化に対応した行政手続への移行

申請者から提出する場合でも、電子化されたものを流用するのであれば、負担は大きくありません。書面提出義務の電子化、電子文書対応の法整備が進めば、契約文書や在勤証明書などの電子化が可能となり、申請者の負担を減らしてくれることでしょう。

2)行政側がオンラインで確認

総合行政ネットワーク、住民基本台帳ネットワークなどのインフラが整うことで、登記情報、住所・納税情報、地図情報などは、行政側で入手可能となるでしょう。ただし、個人情報の保護と利用についての制度整備が前提となります。

3)手数料納付のオンライン化

インターネットバンキング等の利用により、手数料の納付が簡単に行えると、申請者の負担は減ります。納付事実を行政がオンラインで確認すれば良いので、添付書類も減りますね。

以上が実現されれば、現行で10必要とされる添付書類は3ぐらいにはなることでしょう。このように、スムーズな電子申請への移行を実現するためには、やはり情報の見極めと活用が大切なのだと思います。

(4)自治体ごとの差はあって当然

地方分権が進む中で、同様な申請であっても各自治体ごとに差が出るのは当然と言えましょう。肝心なのは、それがきちんと整理されて、わかりやすく情報公開されていることです。

例えば、法令で申請に必要な10の必須項目(情報)を定めるとします。そして、それ以外にオプションとして10の任意項目を設けると。各自治体は、自分たちの地域の実情や事務処理能力に合わせて、最低ラインの10項目にすることも可能ですし、厳しく20項目とすることも可能です。こうしておけば、XMLへの対応もスムーズですし、国民から見てもわかりやすいですね。

これらの情報がデータベース化されて、比較検討できるようになっていれば、より規制が少ないところで事業を展開しようか、といった考えも出てくることでしょう。

(5)ナレッジの活用とコミュニケーションツール

インターネットといえば、双方向性のあるコミュニケーションやコミュニティ。ならば、これを電子申請に利用しない手はないですね。ということで、これからの電子申請システムには、コミュニケーションツールとしての機能が必須になってくるのだと思います。

申請や審査に関するノウハウやナレッジと言ったものは、FAQやナビゲーション機能で提供可能ですが、できれば「人」に教えて欲しいものです。で、誰に教えてもらうかといえば、担当の行政職員はもちろんのこと、過去に同様の申請をしたことがある国民、その道に詳しい専門家など様々です。行政職員同士の情報交換も可能ですね。この機能により、

・情報の横断的な活用
・行政職員のレベルアップ
・行政への市民参加
・審査過程等の国民チェック

が可能となります。ナレッジの多くは、文書など目に見える形で物質化されておらず、各人の頭の中にあると言われるようですが、情報の見極めと活用が大切となる電子申請においては、コミュニケーション機能を活用して、頭の中にあるナレッジをみんなで利用できるようにする必要があると思うのですね。

ということで、今一度基本に返って、電子申請におけるITの活用を考えてみたい今日この頃です。

 


All Rights Reserved. Legal Notices. Copyright 1999-2004 Manabu Muta