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電子申請の失敗:汎用受付等システムに欠けているもの 2002年10月24日

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省庁や自治体で構築・運用が進められている、汎用受付等システムについて、問題点を指摘して、本来あるべき姿を提案しています。

要旨:
現在の「汎用受付等システム」は失敗作である。その失敗は、戦略レベルからの失敗から導き出された結果であり、e−Japan重点計画の失敗を意味する。

現在のような申請先ごとのバラバラなシステムを停止し、全府省における手続の受付・結果通知等について汎用的に利用できるシステムを構築するべきである。

 
最近は、すっかり辛口モードであるが、決してウケを狙っているわけではなく、ホントこのままじゃ電子申請はヤバイという気持ちからくるもの。ということで、今回のテーマは「汎用受付等システム」である。

汎用受付等システムとは

電子申請において、「汎用受付等システム」なるものがある。この「汎用受付等システム」は、もちろん「使える電子申請」を実現するために作られるべきものであるが、現実を見ると、「使える電子申請」の足を引っ張り、「使えない電子申請」の製造元となっているのである。ちょっと言い過ぎかもしれないが、作者は本当にそう思う。

理由を説明する前に、「汎用受付等システム」とは何かを考えてみよう。

文字通りに考えると、

「汎用」=広く色々な方面に用いること(英語だと"general-purpose"と言うらしい)

なので、

広く色々な方面(分野、領域)で使える受付等の機能を有する電子申請システム

と言えるだろう。

申請・届出等手続のオンライン化に関わる汎用受付等システムの基本的な仕様によると、「e−Japan重点計画」(平成13年3月29日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定)において整備することとされている、

複数の手続の受付・結果通知等について汎用的に利用できるシステム

が「汎用受付等システム」とされている。

では、「e−Japan重点計画」にどう書かれているかと言えば(5.行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進 >> (3)具体的施策 >> b)申請・届出等手続の電子化)、

ii)2003年度までにオンライン化実施という目標達成を着実なものとするため、次に掲げる事項を推進する。

各府省は、申請・届出等手続の電子化に関わる共通的基盤システム(府省認証システム、複数の手続の受付・結果通知等について汎用的に利用できるシステム(以下「汎用受付等システム」という。))を2002年度までに整備する。(全府省)
このため、行政情報化推進各省庁連絡会議において、汎用受付等システムの整備に当たって、府省間で整合性を図る必要があるものについて、2001年度早期に基本的な仕様を取りまとめる。(総務省及び全府省)

となっている。電子申請において共通インフラとなるシステムということだ。

e−Japan重点計画の失敗

はっきり言って、既にこの時点で二つの大きな失敗を犯している。つまり、

各府省において汎用受付等システムを整備させたこと

汎用受付等システムの定義を「複数の手続の受付・結果通知等について汎用的に利用できるシステム」としてしまったこと

の二つである。

この結果、「汎用受付等システムの基本仕様」はあるものの、各省庁が個別の「汎用受付等システム」を構築してしまい、ある省庁はプログラムのダウンロードが必要だったり、ある省庁はWeb上の入力フォームに記入したりで、それぞれバラバラの電子申請が稼動してしまったのである。

こうなると利用者は大変で、申請先が変わるごとに、別のプログラムを入手したり、マニュアルを読まなければいけないのである。中には、プログラム間の干渉により、一つのパソコンで対応できなくなったりすることもある。

当然ながら、各省庁で別々に同じようなシステムを開発するため、税金の無駄使いも甚だしい。

これでは、「汎用受付等システム」ではなくて、煩雑受付等システム、いや(色んな省庁に形を変えて現われる)繁殖受付等システムといった感じである。ワンストップサービスどころか、ドントストップサービス(サービスが欲しければ電子申請を探して動き続けなければいけない)である。

では、どうすれば良かったかと言えば、簡単なことで、

汎用受付等システムの定義を

全府省における手続の受付・結果通知等について汎用的に利用できるシステム

として、

全府省が協力・連携して、汎用受付等システムの整備を進める

とするのである。今からでも遅くはない、早急に方針を変更すべきである。

汎用受付等システムに追加が必要な機能

最後の仕上げとして、「汎用受付等システムの基本仕様」に、ある一つの機能を追加するのである。その機能とは、

受付した申請データの振り分け機能

である。

この機能は、申請データを手続に応じて所管する行政庁へ振り分ける、という簡単なもので、霞ヶ関WANという立派な府省間ネットワークがあるのだから、他愛もないことである。

ちなみに、「汎用受付等システムの基本仕様」は、電子申請に必要な機能がきちんと(合格点レベルで)盛り込まれている。

具体的な申請イメージ

具体的には、次のような流れとなる。

(1)ワンストップ電子申請のページへアクセス

政府が電子政府ポータルと位置付ける電子政府の総合窓口へアクセスする。続いて、「電子申請のページ(各種行政手続の受付はこちら)」をクリック。

※各省庁のWebサイトでも、「電子申請のページ」をリンクしておけば良い。リンクは当然フリーとする。

※常時接続でない利用者のために、プログラムダウンロード方式も併せて用意しておくのが良い。

(2)ガイダンスに従って申請

電子申請のページでは、必要な手続を探していくと、自動的に申請画面に辿り着くので、申請データを入力して申請(送信)する。

※検索・ナビゲーション機能が充実していることは言うまでもない。アマゾンなど優秀なオンラインショップのサイトを見習うべし。

※電子署名は添付書類といった問題は、ここでは省略してある。

(3)申請データは総合受付サーバへ

申請データは、最初に「総合受付サーバ」に届けられる。この「総合受付サーバ」から、手続の種類に応じて各省庁へ申請データが振り分けられる。

※法律的には、申請データが「総合受付サーバ」に到達した時点で、申請が完了したことになる(=審査義務の発生)。

(4)申請内容の審査と処分(結果通知)

申請データを受け取った省庁は、申請内容を審査して処分を下す。処分結果は、申請者にメールで通知すると共にWebに掲載する。

※Web掲載については、アクセス制限等により個人情報の取扱いに注意すること。

まとめ

「汎用受付等システム」に足りないもの、それはワンストップサービスの拠点となる窓口である。その窓口は一つで良いのである。府省内であれば、それは可能であるはずだ。そして、振り分けられた申請データを処理する部分(バックオフィス)については、一定の仕様に従ったシステムを各省庁が整備すれば良いのである。

つまり、「汎用受付等システム」を一つのものとして整備するのではなく、表と裏の二つに分けて、表については全府省が協力・連携して整備し、裏については各府省で整備すれば良いのである。

現在稼動している「汎用受付等システム」は、先行省庁とされる総務省、国土交通省、経済産業省である。担当者も、このままではまずいと思っているのではないだろうか。もし、そうであるならば、早急に本来の意味における「汎用受付等システム」の実現を目指して欲しい。

参考サイト

総務省:電子申請・届出システム
http://www.shinsei.soumu.go.jp/

国土交通省オンライン申請システム
http://www.goa.mlit.go.jp/

経済省電子政府
http://www.meti.go.jp/application/index.htm

汎用受付等システムの構築・運用に関する共通事項
http://www.soumu.go.jp/gyoukan/kanri/020329_1.htm

申請・届出等手続のオンライン化に関わる汎用受付等システムの基本的な仕様
http://www.soumu.go.jp/gyoukan/kanri/010806_1.htm

e-Japan重点計画
−高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画−
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/010329honbun.html


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